外壁をタイルで仕上げてあるマンション、本当に多いですよね? タイル仕上げのマンションは、昭和60年代から急速に増え、塗装に比べて高級感もあるため、現在では主流の仕上げとなっています。
タイルの材質は主に磁器であり、耐久性が非常に高く「メンテナンスフリー」と思われている方も多いと思います。
タイルは建物に接着されている物です。タイル自体は半永久的に保っても、接着剤はそうではありません。
貼ってある物はいつか必ずはがれて落ちます。
はがれて落ちる前の段階で、接着剤が酸性雨で溶け出し、タイルと建物本体の間に空間ができた状態になります。
これを「タイルの浮き」と呼びます。
では、「タイルの浮き」について、ご説明していきましょう。
① 関連する法律について
2008年4月に改正された建築基準法施工規則で、外壁がタイル貼のマンションでは、
築10年を経過して築13年までに外壁の「全面打診調査」が義務付けられています。
調査対象となるのは、タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)の場合です。 マンションやホテルに代表される、特殊建築物の定期調査では、外壁仕上げ材についてまず、
・目視による劣化や損傷の状況の確認 ・手の届く範囲の打診調査を実施し、浮きの有無を判断
※打診調査の様子
その上で、
1.手の届く範囲の打診等により異常が認められた場合 2.竣工、外壁改修等の後、10年を超えてから最初の調査である場合
に「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」を全面的に打診等により調査しなければならない。
つまり、10年毎に全面打診調査が必要となります。
打診調査の結果、異状が認められた個所の修繕工事を行うことになります。
例外として
1.当該調査の実施後3年以内に外壁改修もしくは全面打診等が行われることが確実である場合
2.別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じられている場合
これらの場合は全面打診調査を行わなくても良いとされています。
この改正の背景には、平成17年(2005年)6月14日に東京都内のオフィスビルの斜壁の外壁タイルの一部(重さ計約785キロ)がはがれ落ち、通行人2名が負傷する重大事故が発生たことがあります。
これを機に国土交通省が全国調査を行ったところ、10年以上経過した3階建て以上の建物で外壁材の落下の危険性のある建物が全国で900件以上あることを把握。建築基準法改正に至ったという経緯があります。
② そもそもタイルの「浮き」とは?
タイルの浮きとは、タイルと躯体の間に空洞ができている状態です。原因は、タイル目地のモルタル表面から雨水が浸透したり、躯体とタイル、モルタルの柔軟性などの違いにより発生したクラック(ひび割れ)や、劣化した伸縮目地などから浸入した酸性雨が、タイル裏に回り、接着剤であるモルタルが溶け出したために起こります。
打診棒でたたくと、うつろな音がする為、発見は容易です。(正常な個所は詰まっている音がする)
※タイルの浮きが進行し、一部剥離落下が始まった外壁
③ タイルの浮きが有ると何故怖い?
前述の通り、浮きが有る=モルタル(接着剤)が無くなっている=接着力が低下している。ということになるので、剥離を起こし落下する危険があります。
また、広範囲にわたり浮きが進行していた場合、1枚が剥離したことをきっかけに、広範囲でタイルがまとめて剥離し、落下することもあります。(下写真参照)
前述の通り、一般的に外壁タイルは磁器であることが多く、重量もそれなりにある為、落下時に下に歩行者などがいた場合は命に係わる事故につながることもあります。
実際に平成元年に北九州市で起きた事故では、落下してきたタイルにより2名が命を落としています。
※広範囲でタイルが落下した外壁。矢印で示した所に、雨水が浸入した雨だれ跡が見られる
事故を起こしニュースにでもなってしまうと、マンション名が不本意な形でインターネット上に残り続けてしまうこともあり得ます。また、マンション名を変えたとしても、入居者の方が住みにくさを感じるようになったり、売却・賃貸しづらくなるようなケースもあるかもしれません。
事故を未然に防ぐためにも、新築から10年または、前回の改修から10年が経過した場合は、必ずタイルの打診調査を受けましょう。
弊社の建物診断では、タイル調査の第一段階である、 ・目視による劣化損傷状況の確認 ・手の届く範囲の打診調査 が無料でご提供できます。これを機にぜひ弊社の建物診断をご利用ください。
修繕方法に関しましては、こちらの動画をご覧ください。